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生産スケジューラAsprova(アスプローバ)に関する資料をダウンロードできます
生産スケジューラを導入するに当たり、リスケジュール(計画変更)の実行速度は重要な要素の一つです。カスタマイズ方法を工夫して、リスケジュールの実行速度を短縮させるアプローチはもちろん可能ですが、データ量が多い場合や、自動計画への要求事項が複雑化するとマシンスペックも重要になることがあります。
特に、生産スケジューラAsprovaの近年リリースされた革新的な新機能「Solver」は、AIによる計画立案の手直しの手間と時間を省くオプション機能として活用されています。
このSolverオプションを活用した計画ロジックでは、膨大な回数を反復して計画を導きだします。そのため、少しでも計画能力の高いPCを使いたいところです。
生産スケジューラAsprova:アスプローバ社が開発する純国産スケジューラソフト
しかし、コストに見合った結果が出るかわからない段階から、とにかくハイスペックなPCを準備する、というのもリスクを伴います。
そこで、クラウド環境上のPCを利用できるサービス「AWS」のEC2を活用してみましょう。
AWSは使った分だけ料金が発生するため、低リスクでハイリターンな投資が可能です。
AWSとは、「Amazon Web Services」の略で、企業向けのクラウドコンピューティングサービスです。名前からもわかる通り、ECサイトで有名なAmazon社が提供しています。AWSでは、様々なサービスを提供していますが中でも「EC2」というサービスを利用すると以下のメリットを得られます。
必要なときにだけサーバー(コンピュータ)を使えるので、無駄がありません。
サーバーの性能(速さや容量)を簡単に変更できるので、使い方に合わせて調整できます。
使った分だけお金を払うので、無駄な出費を抑えられます。
数クリックでサーバーを起動できるので、すぐに使い始められます。(ブラウザ上で完結するためインストールが不要です)
データを安全に保管できる仕組みが整っています。(データは暗号化され、アクセスの履歴も残ります)
インターネットがあれば、どこからでもサーバーにアクセスできます。(もちろん特定の場所以外からの接続を禁止することも可能です)
「EC2」はAWS上で構築できる仮想サーバーで、構築が手軽であることやスペックの増強を簡単に行えることから、多くのWebサービスで採用されています。
Solverとは、生産スケジューラAsprovaのオプション機能のひとつで、AIで生産計画を最適化します。
多くの場合、人が行っている業務をシステム化する際には、一方を立てればもう一方が立たずといったトレードオフのバランス感覚というのが1つの障壁となります。Solverオプションでは、そんなトレードオフ問題を解決します。たとえば、納期遅れは極力減らしたいけれど、段取時間も短縮したい。という場合にSolverオプションが有能です。
担当者がどの作業を連続で実施させるべきか、どの注文を優先させるかなど、人が都度意思決定をしながらリスケジュールを繰り返して、バランスのいい計画を模索することになります。
「納期遅れが少ない」、「段取り回数が少ない」など、スケジューリング結果に対する評価ポイントとその重みを事前に設定することで、膨大な計画結果を評価した上で最適な計画パターンを提示します。
データ量や自動計画への要求事項によるため一概には言えませんがSolverオプションの自動計画では何十万~何百万回もの検証を繰り返すことがあります。
処理時間は数分で処理が終わるケースが多いですが、複雑な評価が必要な場合は数十分かかるケースもあります。
導入後の運用が落ち着いてくれば、それでも十分な速度であることがほとんどですが運用初期段階では、マスタの整備とリスケジュールを繰り返して計画精度を高めていく必要がありますのでリスケジュール速度が早いことは特に有用です。
そこで、AWS環境にハイスペックPCを構築して自分のPCと比較してどれだけリスケジュール速度が早くなるのかを検証してみました。
パソコンのスペックとして、主に大きな要素として「CPU」と「メモリ」があります。また、Asprovaを活用する際には、CPUのクロック速度というのも重要なので前提知識をおさらいしておきましょう。
CPUは、パソコンの「頭脳」とも言えます。すべての計算や指示を処理する役割を持っています。例えば、アプリケーションを開いたり、ウェブページを表示したりする際に、CPUがその指示を受け取って実行します。
コア数(CPUに内蔵しているパーツ)が2つなら、2つの頭脳があるということになります。ただし、同時にいくつの頭脳を使うかはアプリケーションや設定によって変わり、いくつ頭脳があっても一つしか使わないというケースもあります。
メモリは、作業スぺ―スのようなものです。パソコンが現在行っている作業や、開いているアプリケーションのデータを一時的に保存します。メモリが多いほど、同時に多くの作業をスムーズに行うことができます。
CPUのクロック速度は、CPUが1秒間にどれだけ多くの指示を処理できるかを示す指標です。通常、GHz(ギガヘルツ)という単位で表されます。例えば、3.5GHzのCPUは1秒間に35億回の指示を処理できるという意味です。クロック速度が高いほど、一般的にはパソコンの処理速度が速くなりますが、他の要素(例えば、CPUのコア数やアーキテクチャ)も性能に影響します。
私のPCでのリスケジュール時間とスペックは以下のとおりです。
まずは、自分のPCよりもコア数やメモリが優秀なAWS環境(EC2)が提供している「c5a.4xlarge」というインスタンスで検証してみました。(インスタンスとは、EC2が提供しているスペックが違うPCの名前のようなものです)
結果は以下の通りですが、コア数もメモリも倍になっているにも関わらず、リスケジュール時間はほとんど変わりません。AsprovaでSolverを実行するうえでのコア数やメモリは、もともと十分にあったようです。
次に、コア数は少ないけれどクロック速度が優秀なAWS環境(EC2)が提供している「r7iz.large」というインスタンスで検証してみました。
その結果は以下になります。リスケジュール時間が約半分になり、劇的な速度改善と言えます。
Solverでは、速度改善のためにクロック速度が重要だとわかりますね。
いかがでしたでしょうか。
今回はAWSのEC2サービスを利用することで、生産スケジューラAsprovaのSolverオプションを最大限に活用し、リスケジュール速度を大幅に向上させることができました。これにより、データ量が多い場合の効率的なリスケジュールが実現します。また、AWSを活用することで高額なハードウェアを購入するリスクを避けつつ、必要な時に必要なだけのリソースを利用できます。その結果、コスト効率も高まります。弊社では、Asprovaの導入支援に加え、AWS環境の構築支援も行っておりますので、生産計画業務の効率化をお考えの際は、是非ご相談ください。
また、実際に弊社の経験・ノウハウを活かした【生産スケジューラの活用事例】の資料をダウンロードできます。
筆者
プロフィール
栗本 恭旦 Kyota Kurimoto
経歴:
6年ほどSierでのスクラッチ開発を経験した後、2021年にトーテックAsprovaチームへ仲間入りし、現在はプロジェクトリーダーとして活躍する。
前職での経験を活かしたロジカルな考え方には定評がある。趣味はガジェット収集で、現在はキーボード沼にハマりKeyball44のカスタマイズに迷走している。
生産スケジューラ『Asprova』
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