導入事例「芝浦機械株式会社様」

カテゴリ
お役立ち情報  ピックアップ  導入事例 
タグ
可視化  MotionBoard  見える化/分析(導入事例) 
B!

標準化×可視化で現場力を底上げ、MotionBoardがもたらした現場改革
1.20年前からの構想と苦労の末に実現したデータ統合と可視化
2.データのリアルタイム可視化で生産性向上とトラブル回避
3.標準化からはじまるDXにより誰でも使えるナレッジで現場力を底上げ

芝浦機械株式会社(以下、芝浦機械)は、成形機や工作機械など多岐にわたる製品を提供している産業機械メーカーです。
今回取材をさせていただいた生産センター 工機生技部(※)では、生産課・設備課を中心にDX推進に力を入れており、品質データの統合と可視化を通じて、現場力の向上に取り組んでいます。
(※)工機生技部:社内製品の基幹部品の鋳造・加工を手掛けている部門。
これまで品質に関わるデータあは、担当者が日ごとに数値の確認、月ごとにグラフ化し評価を行っており、月次の報告会でのみグループ内で共有されていました。そのため、データの変化に気付くことが遅れることがあり、リアルタイムにチェックできるツールが必要でした。また、品質データは別々のExcelで管理されていたことから、統計的な解析を行うためには都度各データを統合する作業が発生しており、かつ、専門的な分析ツールを使用しなくてはならなかったと言います。
これらの問題を解消するために、品質データの一元化と統計的な解析、そして情報共有の即時性とリアルタイムな可視化が行えるツールとして選ばれたのが「BIツールMotionBoard」(以下、MotionBoard)です。

トーテックアメニティ株式会社(以下、トーテック)は、2020年から工機生技部の品質データの基になるデータベースの構築を行い、今回MotionBoardの支援を行いました。今回は、データベースの構築からはじまり、MotionBoardを活用したデータの可視化・標準化に至るまでの芝浦機械様の取り組みについて、次の方々に伺いました。

<芝浦機械株式会社>(発言順)
工機生技部 生産技術課 課長 藤本亮輔氏
工機生技部 生産技術課 鋳造技術担当 主幹 二瓶祐仁氏

<トーテックアメニティ株式会社>
産業システム事業部 東日本営業部 担当部長 神谷智之
産業システム事業部 東日本営業部 髙橋真帆
産業システム事業部 第1システム部 第2グループ 課長代行 佐藤諒明
産業システム事業部 第1システム部 第1グループ 加納颯太

     

東京本社:〒100-8503 東京都千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル
沼津本社:〒410-8510 静岡県沼津市大岡2068-3
創業:1938年(昭和13年)12月
設立:1949年(昭和24年)3月
資本金:124億8千4百万円
従業員数:2982名、単独1560名
事業内容:射出成形機、ダイカストマシン、押出成形機、工作機械、超精密加工機、微細転写装置、高精度光学ガラス素子成形装置、産業用ロボット、電子制御装置、鋳物などの製造・販売およびレトロフィット・アフターサービス等

芝浦機械株式会社のサイトはこちら

目次

  1. グローバル市場に応える、芝浦機械の革新と現場力
  2. 工機生技部が描くDXロードマップとデータ統合の挑戦
  3. 溶解番組表(※)から始まったプロジェクトの苦悩(※)溶解作業のスケジュール表
  4. 品質データの”見える化”で現場が変わる!MotionBoardの導入効果とは
    ー現場にフィットする可視化を目指して:統計とデザインの融合
  5. 次のステップはAIを活用した現場改善活動を目指す
  6. トーテック担当者コメント

グローバル市場に応える、芝浦機械の革新と現場力

芝浦機械は、射出成形機、ダイカストマシン、押出成形機、工作機械といった産業機械を製造しており、お客様が求める品質・コスト・納期にお答えするため、日々改善と革新に取り組んでいます。
これまでに培ってきたものづくりの知見と現場力を基盤に、グローバル市場の多様なニーズにも柔軟に対応し、世界中のお客様に最適なソリューションを提供いたします。
さらに、DXを積極的に活用し、製造工程の各領域でデータとデジタル技術を融合させることで、より効率的な生産を実現します。今後も、持続可能な社会の実現と産業界の発展に貢献にグローバルパートナーとして、今までにない新たな価値を創造し続けてまいります。

工機生技部が描くDXロードマップとデータ統合の挑戦

工機生技部 生産技術課 課長 藤本亮輔氏

「工機生技部のロードマップとデータ統合の取り組み」

工機生技部では、生産技術課・設備課を中心に2022年から3年計画のロードマップを策定し、継ぎ足しながら長期的な視点でDXの取り組みを進めています。その中でもナレッジデータベースの構築と活用は重要なテーマの1つです。現在、これまで散在していたデータの可視化・標準化を進めており、その手段の1つとして、MotionBoardを活用しました。単なるデジタル化にとどまらず、誰もが使いやすく、活用しやすい仕組みづくりを目指しており、標準化を意識した整備を進めています。
この取り組みの根底には、「標準化があってこそのデジタル化」があると思っています。この標準化のプロセスが最も大変な部分でもあります。現場では、業務内容は文書化されておらず、作業や判断基準は口頭でなんとなく伝えられているのが実情です。そのため、まずはそうした業務を定型化・形式化するところから始める必要がありました。特に課題となるのは、経験や勘に基づいた「暗黙知」の扱いです。こうしたノウハウを、誰もが理解・活用できる「形式知」として共有加納な形を変えていくことは、多くの時間と労力を要し、現在もなお試行錯誤が続いています。

工機生技部 生産技術課 鋳造技術担当 主幹 二瓶祐仁氏

「20年前から構想していたデータ統合と可視化」

入社当時から、品質業務に関する様々なデータが別々のファイルに保存されていたため、「これは1つにまとまらないのか」と感じていました。ただ、長い歴史を重ねてきたこのデータを統合するのは容易ではなく、いつかタイミングがあれば取り組みたいと、20年前から思っていました。そんな中構想を続けていたところ、「MotionBoardで実現できるかもしれない」と感じました。その前に溶解番組表システムの導入を皮切りに、1つのデータベースが構築され、これを活用することで、今まで散在していた品質に関わるデータを一元化できる可能性が見えてきました。データを1つにまとめることで、これまで見えなかった情報が可視化され、業務の質や効率の向上につながると考え、今回の取り組みに至りました。

溶解番組表システムから始まったプロジェクトの苦悩

芝浦機械様では、溶解番組表システムの導入をきっかけに、データベースを構築後、MotionBoardを活用するプロジェクトが始動しましたが、その道のりは非常に大変なものだったといいます。
※溶解番組表システムとは:二瓶様とトーテックで作り上げた溶解作業のスケジュール表のこと。

「昔からあるデータを1つにまとめるというのが非常に難しかった」

工機生技部 生産技術課 鋳造技術担当 主幹 二瓶祐仁氏

品質に関わるデータは、様々なファイルに分散して保存されており、それらを1つにまとめることは非常に困難でした。ファイルを統合するにあたって、必ず1つのユニークなキーが必要ですが、全てのファイルに同じキーが存在していないことが大きな課題でした。
例えば、A、B、Cのファイルがあったとします。AとBには同じキーがあり、同様にBとCにも同じキーがあってもAとCには同じキーがないケースの場合、この3つのファイルを統合するには、AとBを統合させたのち、Cを統合させる必要がありました。実際には10種のファイルを統合させましたが、まるでパズルを解くように、複数のキーを組み合わせて全体を統合する作業は、非常に手間がかかり、最も苦労した部分です。
また、情報を統合するにあたり特に難しかったのは、もともとExcelなどで個別に管理されていたデータの活用です。これらのデータは、もともとつなげることを前提に収集されたものではなかったため、それぞれの情報を結び付けて1つのデータにする作業には、細かな確認と調整が必要でした。
さらに、古くから使われてきたファイルも多く、内容や構造が統一されていないケースもありました。それらを1つひとつ紐解きながら、必要な情報を抽出し、つなぎ合わせていく作業は、膨大な時間と労力を要する取り組みとなりました。



また、システムやITに関する知識がまったくない状態からのスタートだったため、最初は非常に苦労しました。特に、溶解番組のシステムを導入する際には、SEの方が話している内容や専門用語が全く理解できず、何を求めているかもわからず、うまく会話ができませんでした。
ただ、取り組みを続ける中で少しずつ理解が深まり、SEの方とコミュニケーションも取れるようになってからは、プロジェクトの進行もスムーズになっていたと感じています。

「部署をまたいだ調整の大切さ」と「社内連携の難しさ」を実感しました。

中でも特に印象に残っていることとしては、部門間連携です。システム構築の中で「サーバーを入れた方がいい」という提案があり、初めて情報システム部門と本格的に関わることになりました。
情報システム部門では、社内のセキュリティやインフラを守る重要な役割を担っているため、申請や調整には慎重な対応が求められます。初めての部門連携では、申請書の内容が専門的で理解が難しく、用語を調べるところから始める必要がありました。
何枚も申請書を書きながら、トーテックさんにアドバイスをいただき、少しずつ前に進めていったことをよく覚えています。この経験は、業務改善を進めるうえで「部署をまたいだ調整の大切さ」と「社内連携の難しさ」を実感した瞬間でもありました。

苦労しましたが、トーテックさんには献身的にサポートしていただきました。システムに乏しいのも分かったうえで、しっかりお話をしてくれて、サポートをとても手厚くやっていただいたため、社内でIT導入をするための知識・経験が備わってきました。

「溶解番組表システムから約5年、順にステップを踏んで今回MotionBoardで構築していきました」

当時担当 トーテックアメニティ株式会社 産業システム事業部 東日本営業部 担当部長 神谷智之

今回のデータの統合は、一度にまとめたわけではなく、順を追ってステップを踏みながら進めていきました。まずは二瓶様より対象のデータの洗い出しを行い、最初のステップとして一部のデータをシステム化して集約。その後、Excelなどで管理されていたデータも含めて段階的に進めていきました。

溶解番組表システムを起点として約5年かけて形になったものであり、二瓶様の20年の構想というのが、今回具体化でき、長年の思いと粘り強い取り組みが実を結んだプロジェクトとなりました。
弊社としても、最初は溶解番組表システムの構築をご依頼いただいたところからはじまり、そこからMotionBoard提案へとつながりました。データベースができたことで、構想の実現に向けた道筋が見えたのは、非常に大きな成果だったと感じています。
また、弊社としては、サポートの手厚さをご評価いただけるのは、芝浦機械様に対して目指していた営業スタイルでもありますので、その想いが伝わって嬉しく思います。

品質データの“見える化”で現場が変わる!MotionBoardの導入効果とは

「リアルタイムに見えるようになったことで、判断が早くなりました」

MotionBoardを活用し始めたことで、品質に関わるデータがリアルタイムで見えるようになり、判断が早くなったことが一番改善した事かと思います。
もともとの品質に関わるデータの報告は、トラブルが発生した際や明らかな規格外れであれば担当者から直接報告があがってきていました。しかし、例えば品質管理の範囲内で徐々に数値が下がっているようなケースでは、それが異常かどうかの判断は担当者の経験や感覚に依存していたため、見逃されることもありました。また、こうした情報は報告会で共有され、ベテランメンバーがデータを見て「これはおかしい」と気づくこともありますが、ただその時には時間が経過しており、早期対応ができずトラブルが深刻化し、生産性の低下につながるケースもありました。
ですが、今はMotionBoardによって、リアルタイムに見え、担当者以外でも自席でデータを確認できるようになり、担当の話を聞かなくてもチェックができるため、アドバイスや早期対応が可能になりました。
MotionBoardによって、このような課題を事前に回避できるようになったのは大きな効果だと感じています。

また、これまでExcelで作成していた報告も、MotionBoardの画面をそのまま活用することで、資料作成の手間が大幅に削減されました。見栄えも良くなり、報告の質も向上しています。実際に、1時間以上の作業時間が短縮されています。
 

実際のMotionBoardの活用の様子


「メモ機能で“宿題”の見える化」

MotionBoardのメモ機能も有効活用しています。以前は、毎月作るExcelに議事録や質疑等、次のアクションを記録していましたが、結局その翌月に新しいExcelファイルが出来上がっていて、知らない間にどうなったかわからなくなっていました。
ですが、MotionBoardでメモを取ると消せないので、宿題がクリアになるまで一生残ります。
担当者からするとごまかせないので、厳しい面もあるかと思いますが、実際に漏れ防止にはなっています。

メモ機能の活用例

「画面イメージは、少しずつカスタマイズを加えています」

MotionBoardの導入後、社内で使いやすく・見やすい画面にするために、少しずつカスタマイズを加えながら運用を進めています。
最初は「形にすること」が目的でしたが、実際に使い始めてみると、現場の声を反映しながら「もう少しこうしたい」「ここは見づらい」といった改善を重ねていくことで、より実用的な画面にできました。
実際に使うメンバーの意見を取り入れながら進めている点がポイントです。見る人によって視点が異なるため、様々な立場の声を聞きながら改良を加えていくことで、より多くの人にとって使いやすい仕組みになってきています。また、今回の構築にあたっては、教育も含めてトーテックさんが支援しており、現場メンバーが自ら改善できるような体制づくりも意識しています。

現場にフィットする可視化を目指して:統計とデザインの融合


 担当SE:産業システム事業部 第1システム部 第2グループ 課長代行 佐藤諒明
担当SE:産業システム事業部 第1システム部 第1グループ 加納颯太

「統計的な分析の観点や表現のノウハウが溜まったことで、統計的観点を踏まえた支援は弊社としても新しい試みでした」

弊社 佐藤より:芝浦機械様のイメージに近づけるため、まずはプロトタイプを作成し、操作教育も実施しました。その結果、芝浦機械様自身がさらに見やすいように加工を加えるなど、積極的に活用していただき、よりフィットした形で提供することができました。
ただし、MotionBoardは専門的な統計ソフトではないため、従来の分析手法すべてを完全に再現するのは難しい部分もありました。そうした課題に対しては、お客様側で運用面を工夫してカバーしていただきました。
この取り組みを通じて、統計的な観点でのノウハウが社内にも蓄積され、弊社にとっても新たなチャレンジとなりました。

「はじめてのMotionBoard構築とデザインへの挑戦でした」

弊社 加納より:統計や分析を行いたいというニーズに応えるため、統計計算式を活用し、どのように見せるかを意識して設計するのは大変な作業でした。デザイン面では、芝浦機械様に自由に任せていただきました。デザインの勉強していたこともあり、その知識を活かして、色使いもこだわり、工場の雰囲気に合うように、落ち着いた色調でボタンや背景を構成させていただきました。初めての構築ということもあり、不安もありましたが、芝浦機械様がとてもやさしく、データ分析に対する理解も深かったため「何をしたいか」が明確で、スムーズに進めることができました。

次のステップはAIを活用した現場改善活動を目指す

「最終的にはMotionBoardを活用するも、品質データをAIで分析したいという構想は20年前から」

藤本様より:現在のMotionBoardを踏まえると、将来的にはデータの傾向分析や、テキストデータからサジェスト機能など、AIによる支援が可能な仕組みが実現できればと考えております。実現可能かはまだ分かりませんが、期待しています。

二瓶様より:品質に関わるデータをグラフで可視化できてはいますが、最終的な判断は人に委ねられており、その判断は個人のスキルや経験年数によって判断が変わってきてしまうので、誰が見ても同じ判断ができるように標準化するためには、ゆくゆくはAIと連携させてできればいいと思っています。
20年思い描いたものが、MotionBoardで実現できた時点で、すでに達成感はありますが、今後はさらにAIを活用して進化させていきたいです。

今後、データ活用や見えるかを検討されている、ツール導入に迷っている方に向けたアドバイスがありましたら、お聞かせください。

工機生技部 生産技術課 課長 藤本亮輔氏

「ツールから入らないことが重要」

ツールから入らないようにするということと、実際使う人の納得感がちゃんと得られないと進まないので、そこは気を付けて進められたらいいと思います。目的が曖昧なままツール導入してしまうと、「何のために使うのか」が分からなくなってしまいます。納得を得ながら進めることが、成功の鍵だと思います。

工機生技部 生産技術課 鋳造技術担当 主幹 二瓶祐仁氏

「妥協をしない」

「よくわからないから、これでいいのかな?」と終わらせてしまうと恐らく使われないシステムになると思います。
だからこそ最後まで妥協しないことが重要かと思います。システムのスペックや仕様に制約があったとしても、それを最大限に引き出すところまではやっぱやりたい。
是非いままでシステム等に関わったことがない人であればあるほど、心折れずに、「妥協しないで最後までやる」という気持ちで頑張っていただきたいと思います。私自身も経験を通じて、強くそう感じています。

トーテック担当者コメント

産業システム事業部 東日本営業部 髙橋真帆

「今後も効率化・改善できることを支援いたします!」

我々としては、保有している仕組を売るのみだけでなく、課題をお伺いしたうえで、よりお客様に適したツールなどの情報を探して、ご提供する等様々取り組んでおります。今後も、効率化・改善等できることを、少しでもお力添えできたらと思っております。

取材日:2025年9月4日
記載の担当部署は、取材時の組織名です。

MotionBoardはウイングアーク1st株式会社の登録商標です。(登録 5395281)
ExcelはMicrosoft Corporationの国際登録商標です。(国際登録1107046)

 

BIツール 「MotionBoard」 基本ガイドブック

資料ダウンロードはこちら

お困りごとがありましたら、お気軽にお問合せください。

関連記事

報告業務を効率化!MotionBoard(モーションボード)のレポート出力機能とは?

生産計画・作業指示の見える化による業務効率化―Asprova×MotionBoardで叶える製造現場のDX―

はじめてのクラウドBI:MotionBoard Cloud で使える”データ活用”