現在、日本の製造業の多くの企業が、生産管理システムを積極的に利用しています。
しかし、多品種・変量・短納期が当たり前になった今、生産管理システムのMRPだけで正しい生産計画を作ることはほぼ不可能です。
製造業の現場では、いまだに Excel と属人的なノウハウ に依存した“アナログ計画”が残っております。
今回は、生産管理システムにおける生産計画立案機能について、問題点と解決策をご紹介し、
を、生産スケジューラSEの視点から分かりやすく解説します。
目次
生産管理システムにおける生産計画立案機能のベースは、資材所要量計算(略称:MRP「Material Requirement Planning」)です。
資材所要量計算(MRP)の計算プロセスを以下に示します。
・需要に在庫を引き当て、足りなければ供給オーダを発行します
・供給オーダは標準リードタイムで計画されます(無限能力での計画)
・部品表(略称:BOM「Bill of Material」)を、製品から部品へと遡って計算します
これにより、必要量を無駄なく見積もった計画が作成できますので、一見、合理的に見えますが、実際の現場では次の問題が発生します。
問題点1:製造負荷の偏り
MRPは製造能力を計算しませんので、需要が偏れば供給日も偏り、繁忙が1点に集中します。
偏りすぎると設備や作業員の能力を超えてしまいますので、結果として「実行不能な計画」が大量に生成されてしまいます。
問題点2:製造負荷の偏り
正味の製造リードタイムで計画すると、少しでも供給オーダが重なったら実行不可能な計画になってしまいます。
そこで、正味の製造リードタイムに少し余裕を持たせた標準リードタイムで計画をします。
それが構成部品から製品まで少しずつ積み重なると、トータルの製造リードタイムが実際より大きく膨らんでしまいますので、結果として仕掛り在庫が増えてしまいます。
問題点3:顧客への納期回答ができない
MRPは顧客納期を基点にして製品から部品へ遡りながら計画しますので、たとえ過負荷で能力に無理があったとしても「希望納期通りの計画」を作ってしまいます。
希望納期に間に合うかどうか分かりませんので、結果として納期回答ができません。
多くの製造業では、上記のようなMRPの限界に対して、Excelを用いた人力での計画立案をされています。
その場合、以下のような条件を、生産計画担当者が頭の中で考えて立案します。
・前後工程の時間関係が矛盾しないか?
・設備や治具が競合しないか?
・作業員は足りているか?
・材料の供給は間に合うか?
・段取り時間を確保できているか?
これにより、MRPの問題点1「製造負荷の偏り」と、問題点3「顧客への納期回答ができない」は解消します。
しかし、MRPの問題点2「製造リードタイムの伸長」については解決しない事がほとんどです。
製造リードタイムを短縮するためには、余裕を含まない正味のリードタイムで計画する必要があります。
▼正味のリードタイムでの計画
そのためには部品の供給オーダと製品の供給オーダを正しく紐づける必要がありますが、人力で紐付けようとすると途方もない時間がかかってしまいます。
そこで、生産管理システムに登録した、"少し余裕を持たせた"標準リードタイムの範囲内で計画することで前後工程の時間関係が矛盾しないようにします。
結果的に、製造リードタイムは伸長したままになってしまいます。
▼標準リードタイムの範囲内での計画
もし、MRPに前後工程の紐付け情報があれば、人力でなくとも部品の供給オーダと製品の供給オーダを正しく紐づけられますよね。
それを実現できるのが、高度生産計画(略称:APS「Advanced Planning and Scheduling」)というソリューションです。
APSは、MRPの“欠けていた要素”を補い、計画を実行可能な状態に自動調整するツールです。
高度生産計画(APS)は、"紐付け情報を保持したMRP"ができます。
さらに、先に述べた以下の事柄を半自動的に処理して生産計画を立案してくれます。
・前後工程の時間関係が矛盾しないか?
・設備や治具が競合しないか?
・作業員は足りているか?
・材料の供給は間に合うか?
・段取り時間を確保できているか?
そのため、正しい順序と能力に基づく計画を瞬時に生成できます。
▼APSで立案した計画のイメージ
結果として、
・製造リードタイムが“正味”になる
・生産能力を超えない計画が自動で作られる
・ 素早く納期回答ができる
という大きなメリットが得られます。
もはや人力では不可能な領域をAPSが肩代わりしてくれるのです。
APSを動作させるためには生産管理システムとデータ連携する必要があり、一般的には、次のデータを連携します。
1.マスタ
品目・作業区・作業手順・BOM を基幹システムからAPSに連携します。
2.トランザクション
需要(受注/独立所要)・製造実績・システム在庫 を基幹システムからAPSに連携します。
製造オーダ・製造計画 をAPSから基幹システムに連携します。
APS(生産スケジューラ)を正しく動作させるためには、自社の生産管理システムやAPSの仕様を深く理解したうえで、データ連携の設計をする必要があります。
そのため、これらのシステム導入に知見と実績を持つ専門ベンダーの支援を活用して設計することが極めて重要です。
生産管理システムのMRPやExcelによるアナログ計画の限界と、APS導入の必要性について解説しました。
・ MRPは能力を考慮しないため現場が混乱する
・ Excelで調整する場合も、リードタイム短縮には限界がある
・ APSは“紐付け情報を保持したMRP”を実現し、正味のリードタイムで計画できる
もし今、
・MRPでは限界を感じている
・計画担当者が疲弊している
・リードタイムが伸び続けている
・営業と現場の納期調整が毎日バトル状態
という状況なら、
APS導入は確実にコスト以上の価値を生む投資になります。
APSのMRP機能を活用して、製造リードタイムを短縮しましょう!
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・連載ブログ「生産スケジューラ(生産計画システム)導入で失敗しないための8つのポイント」
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筆者
プロフィール
岩島 健裕 Takehiro Iwashima
経歴:
新卒入社後、販売管理システム導入支援(プログラマ)を2年間経験する。
その後、10年以上に渡り、生産スケジューラの導入支援に携わる。現在は、導入プロジェクトのリーダーとして、ユーザと実装メンバーを繋ぐ役割を担う。
得意技は、生産スケジューラの標準機能では実装できないスケジューリング要件への対応(プラグイン)。
設計に留まらず、時にはプログラミングも担当する。
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