製造業において「平準化」は、もはや避けて通れないテーマです。
しかし現場では、「スケジューラを導入したのに結局うまくいかない」という声も少なくありません。
その原因の多くは――
「平準化=生産量の均等化(生産標準化)」としか考えていないことにあります。

――――――平準化のよくある誤解と正しい設計(在庫×生産)――――――
実際には、その考えのままではほぼ確実に平準化は失敗してしまう、というぐらい「在庫」と「生産」を同時に設計する必要のあるテーマです。
本記事では、製造業における平準化の失敗原因を整理し、「在庫最適化」と「生産スケジューラ(Solver・Asprova Auto MPS)」を活用した解決方法を具体的に解説します。
製造業における平準化とは?ー生産平準化と負荷平準化の違いー
まず基本から整理します。
平準化とは、
生産量や品目、負荷のばらつきをならして一定化することです。
さらに重要なのは、以下の2つの軸です。
• 量の平準化:日・週単位で生産数量を一定化する
• 種類の平準化:複数の製品を均等に混ぜて生産する
この2つを組み合わせることで、
「ムリ・ムラ・ムダ」を排除し、安定した生産を実現します。
製造業で平準化がうまくいかない2つの理由
現場で平準化がうまくいかない理由は明確です。
① 需要は平準化されていない
市場は常に変動しています。
需要は日々上下するため、それをそのまま生産に反映すると負荷が崩れます。
② 生産だけでは調整しきれない
これは多くの現場が見落としている重要ポイントです。
需要の波を吸収する手段は大きく2つしかありません。
• 生産(作るタイミングを変える)
• 在庫(持つことで吸収する)
つまり、平準化とは「生産か在庫か」で波を吸収する設計問題なのです。
在庫平準化と生産平準化の関係
ここがスケジューラ導入で最も誤解されるポイントです。
■ 生産平準化だけをやるとどうなるか?
• 日々の生産量は安定する
• しかし需要との差分は在庫に現れる
→ 過剰在庫 or 欠品が発生してしまう
■ 在庫だけで吸収するとどうなるか?
1.「いつか売れるだろう」で作り続け、需要予測が甘いまま一定の生産を継続
2.在庫が見え始めるが止められないが、固定化された生産計画は止められない
3.売れ筋と在庫のズレが拡大し、「在庫はあるのに売れるものがない」状態へ
4.キャッシュフロー悪化し、コスト・資金の限界に到達
5.生産停止 or 大幅減産 値引き販売(投げ売り)
→需要と乖離した生産を継続することで在庫が蓄積し、最終的に「値崩れ・廃棄・資金逼迫」によって一気に崩壊する可能性を秘めています。
■在庫依存が崩壊する理由
① 需要と切り離されている
・作る判断に市場が関与していない
② 在庫が“逃げ道”になっている
・問題を先送りできてしまう
③ 誰も止める意思決定ができない
・営業:売る前提
・生産:作る前提
・結果:止まらない

――――――生産だけ / 在庫だけ では平準化は失敗へ――――――
■ 正解:両方を同時に設計する
理想形はこうです。
• 生産:できるだけ平準化する
• 在庫:最小限のバッファとして設計する

――――――在庫を用いて生産の安定化へ――――――
つまり、
「在庫を使って需要を平滑化し、生産を安定化する」
これが本質です。
実際の生産計画でも、PSI(Production・Sales・Inventory:生産・販売・在庫)を基点に設計し、在庫と負荷のバランスを見ながら平準化するのが一般的です。
生産スケジューラ導入が失敗する3つの原因ー製造DXの落とし穴ー
ではなぜ、スケジューラを入れてもうまくいかないのか。
よくあるパターンは次の3つです。
- 目的が「計画作成」になっている
- 本来の目的は「平準化」
…Excelから置き換えることがゴールになってしまう
- 本来の目的は「平準化」
- 評価指標が曖昧
- 在庫最小化?
- 納期遵守?
- 負荷平準?
… 優先順位がない状態へ
- 在庫と生産が分断されている
- 生産計画は別
- 在庫は別管理
…結局最適化ができない

――――――3つのズレにより、スケジューラは機能しない――――――
Solverが変える「考え方」
このように、「在庫」と「生産」を同時に扱う必要がある時点で、人手やルールベースでは限界があります。
そこで必要になるのが「Solver」です。

――――スケジューリングの考え方の違い――――
従来のスケジューラは、
• ルールベース(順序決め)
• 人のノウハウ依存
でした。
一方Solverは、
• 数十万〜数百万通りの生産計画パターンから最適解を探索
• 評価指標(コスト・在庫・負荷など)を同時に最適化
という特徴があります。
つまり、「どう並べるか」ではなく「何が最適か」を計算するツールに変わります。
Asprova Auto MPSが解く「基準生産計画」の課題
さらに重要なのが「Asprova Auto MPS」です。
生産管理部門が悩んでいるポイントは、
- 日々の順序計画(小日程計画) ではなく
- いつ、何を、どれだけ作り、どれだけ在庫を持つか(基準計画)
です。
Asprova Auto MPSはこの在庫と生産を同時に設計する領域に特化したツールです。
特徴
- 在庫・需要・設備を同時考慮
- 在庫の下限、上限の制約を考慮
- 複数ラインの負荷平準化と在庫適正化を両立
- Solverにより最適計画を自動生成
従来との違い
結果として、「在庫平準化 × 生産平準化」を同時に実現できるのが最大の価値です。

平準化を成功させる3つのポイント
最後に、実践的なポイントを整理します。
① KPIを明確にする
• 在庫回転率
• 負荷変動
• 納期遵守
▶ 何を最適化するのか決める
② 在庫を“戦略的に持つ”
在庫は悪ではありません。
・バッファとして設計する
・日数・安全在庫を定義する
▶ 生産安定化のための手段
③ 計画を“探索問題”にする
人の調整には限界があります。
・複数制約を同時に扱う
・トレードオフを数値化する
▶ Solver活用が必須
まとめ
平準化は単なる「ならし」ではありません。
本質は、需要の変動を、在庫と生産でどう吸収するかという設計問題です。
そして現代の製造業では、
• 在庫最適化
• 生産負荷平準
• 納期遵守
を同時に達成する必要があります。ただこれを人手でやるには限界があります。
だからこそ、
• Solverによる最適化
• Asprova Auto MPSによる中期計画
が重要になるのです。
もし今、
- スケジューラ導入がうまくいっていない
- 平準化が曖昧なまま進んでいる
のであれば、一度立ち止まって考えてみてください。
「在庫と生産、両方を同時に設計できていますか?」
そこが、成功と失敗の分岐点です。
多くの企業がスケジューラ導入でつまずくのは、この「在庫と生産を分けて考えてしまう構造」にあります。
もしここが整理できていない場合、どんなツールを導入しても成果は出ません。
我々トーテックアメニティ株式会社はこのような課題に対し、多くの企業様の支援を行っており、Solverの導入、Asprova Auto MPS、並びにAsprovaの導入経験が豊富です。
生産スケジューラの見直しや平準化でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。貴社の業務に合わせた最適な在庫・生産計画をご提案します。
ぜひお声がけください。
| 筆者 松野 隼弥 Takaya Matsuno 経歴: 2015年からAsprova導入エンジニアとしてのキャリアをスタートし、 2018年にはシニアAPT認定を取得。以降はプロジェクトリーダーとして、Asprovaの導入支援を行う。 スケジューラの導入に加え、計画に対する実績収集や、計画と実績の“見える化”の仕組みも導入。 その経験を活かし、Asprova PlusやMotionBoardを活用した工程分析モデルの企画・立案にも取り組む。 また、最新の自動計画立案機能「Solver」については、立ち上げ当初の2021年からPoC(概念検証)に参加。 現在はAsprovaの導入を中心とした十数名のエンジニアグループで、グループリーダーを務めており、プロジェクトの責任者・アドバイザーとして案件に参画。 『今後も導入経験を活かした記事を発信していきますので、ぜひご覧ください。』 |




