可視化・情報統制におけるSCMシステムの課題解決方法とは
連載テーマ「ファブレス企業の計画課題をSCM(サプライチェーンマネジメント)で解決」
- Vol.1 ファブレス企業が抱えるSCM(サプライチェーンマネジメント)課題とは
- Vol.2 可視化・情報統制におけるSCMシステムの課題解決方法とは
- Vol.3 Coming Soon...
はじめに:ファブレス企業には“構造的に”SCM課題が発生しやすい
前回は、ファブレス企業が抱える課題として、
1.需要変動による在庫管理の難しさ
2.納期遅延の悪循環
3.情報統制の弱さ
を取り上げました。
特に、ファブレス企業は生産・調達・在庫・進捗情報が社外に散在するため、“情報の分断が起こりやすい構造であることが大きな特徴でした。
今回は、上記3つの課題に対して、この分断された情報をどのように統合して、在庫・納期・金額の判断精度を高めていくのか?という点を中心に、SCMシステムの役割を解説します。
そして、SCMシステムの導入に置いて、どのようなシステム構成が望ましいかをお話します。
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需要変動による在庫課題の解決
ファブレス企業では、生産や在庫が社外にあるため、需要変動をリアルタイムで正しく把握しづらいという構造的課題がありました。
さらに、現在どこにどれだけの在庫があるかを把握しようにも、Excel管理による情報のバケツリレーや情報のサイロ化が起こることで、在庫管理が困難になるというのもよくある課題です。
そのような課題の解決策として、SCMシステムで、この“見えにくい在庫を一元管理”することが重要になります。
◆在庫のリアルタイム可視化
- 過去実績だけで発注してしまう
- 自社倉庫
- 外部倉庫
- サプライヤー側の在庫(預託含む)
- 入荷予定・出荷予定
これらの情報をSCMシステムに統合し、”同じ画面で把握する”ことにより
- どの商品が過剰か
- どの商品が不足か
- どのSKUが不良在庫か
を早いタイミングで判断できるようになります。
◆需要・在庫・供給の繋がりが一元管理された発注業務
各部署単位に管理されたデータを1つのSCMシステムへ統合することにより 全体を加味した発注業務を行えます。
- 需要(販売予測)
- 現在庫
- サプライヤーのリードタイム
- 調達計画
これらのデータが揃うことにより経験即・担当者の長年の勘による発注業務を脱却し 合理的な判断による発注業務を行うことができます。
在庫管理や発注業務は、部署単位・得意先単位に違った管理をされている事が多いですが、SCMシステムを1つのプラットフォームにすることで、統制を取っていくことが大事になります。
納期課題の解決
ファブレス企業では、納期に関する情報が相手企業からメール・PDF・Excelなどでバラバラに届くため、
遅れに気づくタイミングが遅くなりがちです。
◆発注中の進捗を可視化
- 発注済
- 生産中
- 完成
- 出荷
- 輸送
- 入荷予定
などの進捗をSCMシステムで一元管理する事により、 遅延の予兆にすぐ気が付けるようになります。
◆発注量の自動計算(MRP)
需要・在庫・リードタイムをもとに必要な発注量を自動計算します。
”安全在庫の保持ルールを製品特性に合わせて構築”することが望ましいです。
この仕組みにより、「遅れが心配」→「在庫を積む」→「在庫過多」のスパイラルから脱出できます。
※在庫保持有無や在庫量ポリシーを、SCMシステムにてルール統制し一定期間毎に見直すことが望ましいです
◆サプライヤー評価
納期遵守率・品質などの履歴が蓄積されるため、どのサプライヤーが安定しているか、”リスクが高いサプライヤーはどこか”をデータから把握できます。
情報統制の強化
数量と金額を「同じ流れ」で管理できていますか?
ファブレス企業におけるSCM課題の中でも、最も見落とされがちで、かつ経営インパクトが大きいのが「情報統制の弱さ」です。
ファブレス企業では、数量と金額の情報が分断され、
- 数量はわかるが金額は遅れる
- 粗利の計算が正確に出ない
- 原価変動が追いにくい
という課題が生まれやすい構造でした。
SCMシステムの重要な役割の一つは、
数量の流れと金額の流れを“同一データ基盤”で管理することです。
具体的には、以下の情報をSCM上でひも付けます。
- 受注数量 × 売価
- 発注数量 × 仕入単価
- 在庫数量 × 在庫評価単価
これにより、「今、どれだけの数量が、いくらの価値を持って動いているのか」をリアルタイムで把握できるようになります。
「在庫=数量」から「在庫=経営資産」へ
数量管理だけの在庫は、現場目線の「保管物」に過ぎません。
一方、SCMで金額まで統合された在庫情報は、経営目線の「資産・リスク」として認識されます。
- 過剰在庫=資金の滞留
- 滞留在庫=評価損リスク
- 回転率低下=キャッシュフロー悪化
これらの情報を同じ画面で可視化できるようになることで、「在庫を持つ・持たない」の判断が、感覚ではなく数字に基づくものになります。
そのため、SCMシステムで売価・在庫単価情報も管理し、「つながらない情報」を標準で統合することが必要です。
SCMデータのシステム化
これまでの①~③でファブレス企業特有の問題点からデータ一元管理をして、総合的な在庫量・発注量管理をしていくことが重要だとお伝えしてきました。
最後に、どのようなシステム構成が望ましいかをお話します。
◆フロントデータ
ファブレス企業は、得意先側のフォーマット、サプライヤー(工場)側への発注統合が必要になります。
特に得意先側の注文フォーマットは、先方都合であるため、変更できません。
また、得意先都合・サプライヤー都合の品目を表すコード(品番)も統一化できない事が多いです。
◆フロントシステム
SCMを最大限活用するためには、フロントデータの統合が必要になります。
- 得意先単位の注文書や内示データの取り込み
- 品番違いデータの統一番号採番
主に上記2点が課題になるケースが多いです。
SCMシステムは決められた動作をするものが多いため、フロントシステム側でデータ統合をする必要があります。
このフロントシステムは、得意先の要請によって変更が発生していきます。
ひと昔前は、都度システム改修が入りシステムベンダーへの支払いが発生しておりました。
最近はローコード(低い開発量)、またはノーコード(開発しない)でフロントシステムが構築できますのでそこも合わせて考えるのがよいでしょう。
まとめ
今回は、ファブレス企業によくある課題の「需要変動による在庫管理の難しさ」「 納期遅延の悪循環」「情報統制の弱さ」におけるSCMシステムでの解決方法をご紹介いたしました。
特に、「情報統制の弱さ」については、連載1回目の記事でもご紹介したように、本質的な課題は
- 情報が外部に分散している
- 生産リードタイムを握れない
- 金額情報が整いにくい
といった「構造的な分断」にあります。
SCMシステムは、この分断をつなぎ直すための仕組みであり、標準的なSCM機能を持ったシステムを活かすことでSCM業務の標準化をも実現します。
また、見える化・一元管理された情報を根拠に、1つのプラットフォーム上での判断が可能になることで十分に改善が進みます。
次回予告
3回目は、「SCM導入を失敗させないためには?」をテーマに、以下の観点から課題の解決策をご紹介します。
- 無理のない導入アプローチ
- 現場が回る運用設計のコツ
- カスタマイズに依存しないSCMの育て方
<関連ブログ>
▶SCMによる在庫適正化 Vol.2 需給計画ができていないとどうなる…?
▶SCMによる在庫適正化 Vol.5 KPI達成を目指す在庫管理の考え方
筆者
プロフィール
仲 正記 Masanori Naka
経歴:
トーテックアメニティ株式会社で20年間以上、様々な製造業様へシステム導入を実施してきた。生産管理システム導入から始まり、生産スケジューラの「シニアAPT認定」を保有して工場計画導入を数多く実施してきた経歴を持つ。
『今後の製造業はSCM業務範囲(需給調整計画)が重要』として、2024年からSCMソリューションも推進している。

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