連載テーマ「SCMによる在庫適正化」
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現在、自社における需給・在庫計画を立てているという企業様の中には、昨年実績に対して○○%減、○○%増というように一定数を決めて増減させるのみという企業様もいらっしゃるかと思います。
そのような方法も1つの手ではあるのですが、そもそも過去の実績は適正数なのか、それに対して一定割合を増減させた計画の根拠は何なのか…と、数値的な根拠があるわけではなく、属人化した計画になってしまっている可能性もあります。
そこで今回は、適正な需給計画を行えていないとどのようなことになるのかという例をお話しさせていただきます。
今回は、よりイメージしていただきやすいように、コロナ渦とコロナ後で大幅な需要変動があったと仮定して、アウトドアメーカーを例にとってお話できればと思います。
まず背景として、コロナ渦はアウトドアブームがあったこともあり、「新たにキャンプ用品を一式購入した」という人の割合も多く、キャンプ用品などの需要が伸びていました。
そして、その時のサプライチェーンの状態を下記と仮定します。
・直営店と卸の2つのチャネルから発注を受け、海外のサプライヤーへ発注している。
・海外のサプライヤーへの発注ともなるため、直営店や卸へ納品するまでのリードタイムは4~6ヶ月。
・直営店ではコアユーザーの購入が多く、卸からは小売店経由で新規ユーザーの購入が多い
コロナ後に向かってアウトドアブームが一服し、新たにキャンプを始める新規ユーザーが減ると、①小売店からの購買が減少します。
すると、小売店や卸の販売が不振となり、②流通在庫が過剰に陥ってしまうという現象が起きます。
そうなると、③卸売はメーカーへの発注を止めますが、④メーカーは需給計画をしっかりとできていなかったために、フォーキャストの見直しが遅れ、当初通りの売り上げ拡大シナリオで発注を実行してしまっていますので、発注残を引き取り、4~6ヶ月分の大量の過剰在庫を抱えることになってしまいます。
こちらは一例ではありますが、このような環境や社会の変化による需要変動に対して合理的な需給計画を立案できていないと、経営に影響を及ぼすような需給バランスの悪化を招いてしまう可能性があります。
では、上記のアウトドアメーカーの一例で需給バランスが悪化した原因はどこにあったのでしょうか。
まずは、将来のトレンドを把握して合理的に意思決定する仕組みがなかったことや、需給計画の策定が属人化していたということが考えられます。
需要トレンドが見えていてそれをもとに、経験や勘に頼らず合理的な意思決定ができていれば、回避できたかもしれません。
そして、需要トレンドを把握するためには、営業拠点からの販売フォーキャストを収集する必要がありますが、それがされずに将来の実需がつかめなかったことも原因のひとつに挙げられます。
さらに、そもそも適正な基準在庫というものが定義できていないことが原因の可能性もあります。
過去の実績から、何となくこのくらいだろう…というような形で基準を設定している場合は、その基準がそもそも適正でなかったという場合があります。
では、需給バランスの悪化を引き起こさないために必要なことは何でしょうか。
1つ目は販売フォーキャストの可視化と見直しです。
企業間の連携を深め、直販の販売フォーキャストだけではなく、販売チャネルすべてのフォーキャストを収集・可視化する必要があります。
2つ目はサプライチェーン計画のシミュレーションです。
販売・在庫・生産・仕入の実績と計画を、数量や金額で即座に可視化・シミュレーションすることで、意思決定を早める必要があります。
3つ目は意思決定をするためのプロセスとITです。
属人化した計画にならないためにも、意思決定を行うための役割やプロセスをしっかりと定義して運用していく必要があります。
意思決定に必要なデータを可視化・シミュレーションして、「誰もが同じ数字にアクセスできるIT基盤」を構築していくことが重要です。
今回は、需給バランス悪化の一例をご紹介させていただきましたが、これはどんな企業にも起こりえる事例だと思います。
従って、そうならないために、「これまでの需給バランスが視えているか?」「将来の適正在庫が合理的に設定できているか?」「将来の需要と供給の変化に即時対応できるか?」という点を自社に当てはめて考えていただくと良いかもしれません。
前回と今回の記事で、製造業における需給計画の必要性をお話しさせていただきまして、需給計画の重要さを改めてご認識いただけたらと思いますが、需給計画を行うと言っても、一部の部署や拠点だけの断片的な需給計画ではなく、サプライチェーン全体を通して需給計画を行っていく必要がございます。
次回は“SCM“による需給計画の実現についてお話しさせていただきます。
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