SCM導入の分岐点:カスタマイズ型かSaaS型か?
連載テーマ「SCMシステム導入で失敗しないためには」
- Vol.1 SCM導入の分岐点:カスタマイズ型かSaaS型か?
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はじめに
変化の激しい時代の中で、SCMについて、システムの導入を検討されているお客様も多いのではないでしょうか。
システムの導入検討で、自分たちの目的に最も合致した製品を選択したいと思われるのは当然かと思います。
様々な尺度がありますが、どれにしても今の自分たちにフィットしたシステムを選択したいものです。
今回はシステム選定の参考となる情報をお届けするため、SCMシステム自体のご説明ののちに、SCMシステムの検討ポイントと、2つのシステム種類についてご紹介させていただきます。
SCM(サプライチェーンマネジメント)システムとは?
SCM(サプライチェーンマネジメント)とは、製品やサービスが顧客に届くまでの供給プロセス全体を最適化するためのマネジメント手法です。
SCMの目的は、原材料の調達から製造、在庫管理、販売、配送に至るまで、サプライチェーンに関わるすべての流れを統合的に管理し、効率化を図ることです。

たとえば、鉛筆と消しゴムのセットを販売しているケースを考えてみましょう。
鉛筆は自社で製造し、消しゴムは外部から購入してセットを組み立てるとします。
このとき、次のような判断が必要になります。
- 鉛筆の原料をどれだけ購入するのか
- 消しゴムをどれだけ在庫しておくのか
- セット商品をどれだけ販売する予定なのか
これらの数値は、サプライチェーン全体の計画に直結する重要な情報です。
しかし、実際にはこうした予測値が統一的に管理されていないケースも少なくありません。
例えば、鉛筆の原料購入計画は製造部門がExcelで管理し、消しゴムの在庫数は倉庫管理部門が手書きの帳票で記録、販売予定数は営業部門が独自の計算式で算出している――そんな状況は珍しくないのではないでしょうか。
このように情報が部門ごとに分散し、形式も異なる場合、全体を統合して最適化するためには多くの時間と手間がかかります。
SCMの本質は「全体最適」です。個別最適ではなく、サプライチェーン全体を見渡して効率化を図ることが重要です。
そこで役立つのが、SCMシステムの導入です。システムを活用することで、予測値や実績値を一元管理し、部門間の情報連携をスムーズにすることができます。
これにより、計画精度の向上、在庫の適正化、リードタイム短縮など、企業競争力の強化が期待できます。
次に、SCMシステム導入のポイントと、SCMシステムを選定する際に押さえておきたい「ハードウェア的な分類」についてご紹介します。システム導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
SCMシステム導入の検討ポイント
SCMシステムを導入する際には、複数の選択肢を比較検討することが欠かせません。
なぜなら、企業が抱える課題と目指すゴールはそれぞれ異なるため、最適なシステムも一様ではないからです。
例えば、次のような観点が検討要素になります。
- 必要な機能はどこまでか?
在庫計画、需要予測、購買計画など、どの領域をシステム化したいのかを明確にする必要があります。
- AIを活用した需要予測を取り入れるか?
近年、AIによる予測精度の向上は大きな注目を集めています。これを導入するかどうかも重要な判断ポイントです。
- SCMで解決したい課題は何か?
リードタイム短縮、在庫の適正化、コスト削減など、目的によって選ぶべきシステムは変わります。
こうした検討を進める中で、重要な比較ポイントの一つとなるのが「システムの提供形態」です。
では、カスタマイズ型とSaaS型の違いについてご紹介します。
カスタマイズ型とSaaS型
SCMシステムには、その提供形態で大きく分類すると2通りの方法があります。
以下に、それぞれについてその内容とメリットをまとめました。
・カスタマイズ型
各会社さんがSCMに抱える問題は様々です。ここでカスタマイズ型と説明しているのは、その会社独自の環境の中で構築されたシステムのことです。
その場合、その各会社の抱える問題にそれぞれフィットする形になるように、導入時にヒアリングを行い、そのご要件の詳細を定義しプログラミング作成します。
大きく分けるとカスタマイズ型の特徴は以下の3つです。
1つ目に、カスタマイズ型ではすべての社内課題に対し、それに合わせてSCMシステムの内容や構成を柔軟に選択しながら構築することができます。
2つ目に、様々な規模感に対応できる部分です。海外を含めたとても複雑な独自の品目の経路がある場合にも、カスタマイズ型であれば、そのデータを投入することで対応が可能です。
3つ目はデータ出力パターンの量が多い点です。印刷する方法や、データの保存方法を指定できるため、そのまま想定しているスタイルで画面や帳票に出力が可能です。
・SaaS型
上記の通り、カスタマイズ型は、自社にフィットさせることができる反面、機能開発が必要になるなど、どうしても多くの時間と費用がかかります。
それは現行のシステムや業務に合致させるためのものであり、必要なプロセスではありますが、その時間と費用を削減する方法はございます。
それがSaaSシステムの活用です。SaaS型では、あらかじめ構成されているSCMシステムの内容に業務をアジャストさせるという形でSCM業務をシステム化いたします。
では、SaaS型の特徴を、カスタマイズ型と比較しながら3つご紹介します。
1つ目は、低コストで導入可能な点です。準化されたSaaS型ですと、前述の通り、SaaS型システムの動作内容に対して、必要な業務のワークフローを検討しフィットさせていくので、前者より時間がかからないため、低コストでの導入が可能です。
また、カスタマイズ型に記載の通り、社内問題に合わせたSCMを動作させると、生産系の要望と財務系の要望が両立し得ないものとなり、運用が混乱することもありますが、SaaS型ではそのような心配もありません。
2つ目は、システム管理の容易性です。カスタマイズ型のように自社内でサーバーを持ち管理する場合、それがオンプレミスでもクラウドでも、それぞれ心配事は発生しますし、問題が発生した際の問い合わせ先が複雑になりがちです。
ですが、SaaS型の場合はプログラムの問い合わせと環境の問い合わせが同じ窓口となり対応がスムーズです。
3つ目は、画面表示での簡潔なまとめ見える化です。一般的にSaaSシステムからは帳票は出力されず、その代わり、各データのエクスポートと、標準的なBI画面が提供されます。
標準的なBI画面が社内要望に合致しているのかは実際にそれぞれのシステムをご確認いただけると幸いです。
-それぞれの特徴・メリット-
|
カスタマイズ型 |
SaaS型 |
|
システム内容が柔軟である。 |
低コストでのSCM導入ができる |
|
様々な規模や複雑なパターンに対応しやすい |
システムの管理が容易である。 |
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出力パターンをシステム内で選択できる |
シンプルなデータ出力への統一とBI画面での見える化 |
どちらが自社に合致しているのか
上記のそれぞれの特徴と長所をご紹介しましたが、次に、どのようなケースでどちらを選ぶべきかという部分をお伝えしたいと思います。
初めにカスタマイズ型が合致しているケースですが、1つ目は現状の業務フローに特殊処理が多く、それを標準的な処理に変換できない場合です。
どういった場合が変換できないのかについては、導入前のお打合せで概要をご確認させていただき、その後のヒアリングの中で詳細を決定していきますので、まずは現在の業務フローが標準的な処理に落とし込めるのかをご相談いただけたらと思います。
カスタマイズ型が合致している2つ目のケースは、使用するデータ量が多く、見たい切り口も多い場合です。
SaaS型のシステムからは一部のデータしか取得できないことが多いですが、カスタマイズであれば、どのようなデータでも出力することが可能です。
次に、SaaS型がおすすめとなるケースですが、これは、業務フローを明瞭で簡潔にしたい場合です。
前述の通り、SaaS型はSCM業務を標準化したものですので、現在の複雑なフローを整理し、標準化されたSCM業務にフィットさせていくことで業務を明瞭で簡潔にすることができます。これにより、業務の属人化からの脱却も推進されます。
また、SCMシステムの導入に際して、社内の意見がどうしてもまとまらないということはあります。そういった際SaaS型は世界標準のSCM管理手法を採用しているため、システム内容を正とすることで社内トラブル回避が可能です。
さらに、SaaS型の場合は使用開始後のスケール変更についても、ハードウェア的な制約がないため、柔軟な対応が可能です
さいごに
以前と比較しますと、費用面などを背景にSaaS型を選択されるケースも増えております。
カスタマイズ型とSaaS型、それぞれに長所・短所があり、どちらが最適かは企業の環境や目的によって異なります。重要なのは、自社の課題や将来のビジョンに合った選択をすることです
次回のブログでは 「理想のSCM運用を実現するための導入ステップ」 というテーマで、実際に導入するためにはどのような準備や手順が必要なのかを詳しくお伝えします。
SCMシステムの導入を検討されている方は、ぜひ次回もご覧ください。
<関連ブログ>
▶SCMによる在庫適正化 Vol.2 需給計画ができていないとどうなる…?
▶SCMによる在庫適正化 Vol.5 KPI達成を目指す在庫管理の考え方
筆者
プロフィール
菅原 隆臣 Takaomi Sugawara
経歴:
製造業のシステム導入プロジェクトを通して経験を重ね、現在はSCM領域のシステム導入を担当。
SCMシステムの導入開始から導入後サポート・データ連携の問い合わせまで幅広い分野を領域としてSCMシステムの顧客最適化を進めている。

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