品質管理~生産管理システムと品質管理の関係~

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連載テーマ「生産管理システムを理解する」

  1. Vol.1 生産管理業務とは〜目的から基本原則まで〜
  2. Vol.2 生産管理システム~その機能、役割とは?どう選べばよいのか?~
  3. Vol.3 生産管理の基準情報(マスターデータ)の整備と維持~基準情報は会社のノウハウそのもの~
  4. Vol.4 生産計画と日程管理 ~生産管理システムにおける生産計画や日程計画の立案とは~
  5. Vol.5 在庫管理システムと生産管理 ~在庫管理の考え方と実践~
  6. Vol.6 資材発注・外注管理 ~社外への手配管理の内容と重点管理ポイントについて~
  7. Vol.7 製造管理~社内における作業管理と工場の統制~
  8. Vol.8 品質管理~生産管理システムと品質管理の関係~
  9. Vol.9 生産管理と受注出荷の連携 ~営業活動と工場との関係~
  10. Vol.10 工場の原価管理~原価低減のための仕組みづくり~

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製造業にとって生産管理と同様に重要な品質管理。
ここでは品質管理の一般論ではなく、生産管理の視点から品質管理を解説します。

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目次

  1. ロットトレース
  2. 期限管理
  3. 歩留り、不良率
  4. 生産管理システムと品質管理
  5. まとめ

ロットトレース

ロットトレースとは、生産や調達のアウトプットにロットという単位で記号を付け、原材料から完成品の出荷までの軌跡を追跡できる仕組みです。
この仕組みにより、生産過程のどこかしらに問題が発見された場合、その問題があったロットを特定し、そのロットからできている製品のロットを回収(リコール)できるようになっています。

「トレーサビリティ」とはこの要求を満たす仕組みをいい、食品や医薬品等の人体に影響の大きい製品や、自動車部品等安全にかかわる製品に導入するよう法令等でも決められています。

さて、生産管理システムでロットトレースを行う場合、システムにどのような機能や要件が必要でしょうか。

まず、生産や受入れ毎に「ロット」や「製造記号」を付与できることが必要になります。
在庫は同じ品番でもロットごとに区別されることになり、先入れ先出しで消費するために入庫日時のタイムスタンプが付加されます。

ロット管理をしないのであれば品番ごと、保管場所ごとに合計数の管理でよいのですが、ロット管理する場合は上記のとおりロットごとの数を保持し、棚卸の際にもロットごとに棚卸できる必要があります。

また、生産にともない消費される際には、完成品のロットと投入材料のロットを紐づける必要があります。

例えば完成品のロットAに投入した材料のロットはXである、というデータをシステムにインプットする必要があります。
ロットトレースが不要であれば構成マスタに従って必要分の材料在庫をマイナスすればよいですが、ロットトレースする場合は都度どの材料ロットを使ったかを入力する必要が出てきます。

以上のように、ロットトレースをする場合はしない場合と比べてシステムへのインプットが複雑かつ高度な内容になります。
また、コンピュータの在庫情報と実物の在庫状況にずれが生じるとロットトレースが正確にできません。常日頃から在庫の厳密な管理が要求されます。

期限管理

食品や薬品、経年劣化するような品目はその使用期限を管理する場合があります。
使用期限を過ぎた在庫は通常引当て対象から外され、廃棄したり再生したり個別の対応が必要となります。

システムで管理する際の仕組みはロット管理と同様に生産や入荷時に期限を入力するか生産日から自動設定し、期限内であれば所要量計算などの引当て対象として扱い、期限を過ぎたものは引当て対象から外します。

日付の閾値での判定だけですのでそう難しい仕組みではありませんが、頻繁に期限切れを起こすようでは問題です。
期限管理をすることは、より適正な在庫管理を必要とするのです。
つまり、欠品を起こさず期限切れをも発生させない絶妙な在庫管理が求められます。

時には廃棄するより先行して次工程に投入してしまった方がロス削減になるかもしれません。
廃棄するか消費してしまうかはシステムでの自動判定は難しいので運用のなかで人が判断することになるでしょう。

歩留り、不良率

生産管理において不良率をどう考慮するかは難しい問題です。
不良率を考慮せず計画を立てると、突発的な不良発生によって予想外の欠品が生じてしまったりします。

通常の生産において不良発生の可能性があるなら、バックアップ手段を考えておかなくてはなりません。
一般的な生産管理システムには不良率の設定を備えている場合が多いですが、それを使う方法がまず考えられます。

不良率を設定すると、設定した品番の必要数を不良率に応じて水増しして手配します。
不良率が1%であれば、100個の所要に対して101個手配します。
この方法は、常に必要数に対して同率で水増し手配しますので、不良率が比較的一定で発生する化学や液体系の生産に向いています。

もう一つの方法は、バッファ在庫でカバーする方法です。
突発的に不良が出るような生産形態や不良率が分からない場合でも、おおよそ持っておけば安心という在庫を常時保持しておけば不良が出た際にも補填ができます。
生産数が上振れしたときの吸収にも使えるので、在庫を持っておくことでどちらにも対応できます。

ただし、単なる安心だけの根拠で在庫を持つのもよくありませんので、これまでのブログで述べてきたように常に適正な在庫数を追求していく必要があります。
なお、不良率とバッファ在庫を併用すると理由のよくわからない余剰在庫が発生しやすく、なるべくどちらかだけを使うようにした方が分かりやすいと思います。

生産管理システムと品質管理

本来、生産管理と品質管理は分けて考えるべきですが、ロット記録や消費期限などは在庫管理領域でもあり、生産管理システムと品質管理を完全に切り離すことはできない場合があります。
またその場合、前述したように品質管理をする場合はしない場合と比べて管理のメッシュが細かくなり、少しの誤差でも運用に影響を及ぼします。

例えば、とある在庫の数がコンピュータの数字と現物の数が違っていたとしましょう。
ロット管理をしない場合であれば、完成品の品質に特に問題がなく原因究明を別にすれば在庫調整をどうするかだけ考えればよいでしょう。

ところがロット管理をする場合で在庫がズレると、どこからズレたのかが問題となります。
トレーサビリティが崩れるからです。

ロットに何か問題が起きても、確実にリコールができるとは限らなくなってきます。
これは特に薬品や食品では致命的な不適合になります。
この場合、在庫のズレが発見された時点で運用を止め、原因と影響範囲を明確にしたうえで在庫調整を行い業務を再開する必要がでてきます。

上記の例のように生産管理システムで品質管理を行う場合、まず生産管理が高度なレベルで行えることが前提条件となってきます。
頻繁に在庫がズレるような運用レベルに品質管理は持ち込めません。
ISO9000シリーズを経験すればわかりますが、まず業務を標準化し統制を行うことが必要です。

まとめ

品質管理を行うためには土台となる生産管理システムにも要求される機能があります。
システム構築の際はまず必要な機能が備わっているかを確認しましょう。

また、品質管理を行うためにはよりメッシュの細かい、正確な生産管理の運用が求められます。
そういう意味で、生産管理と品質管理の接点をどこにするかは非常に難しい検討課題です。
ここで簡単に答えを書くことはできませんが、私たちエンジニアがシステム提案する場合もかなり神経質になる問題です。

筆者
プロフィール

星野拓 Takumi Hoshino
経歴:
自動車部品メーカーの設備技術者、物流システムメーカーのSEを経てトーテックアメニティに入社。
生産管理システムのプレSE及びプロジェクトマネージャとして豊富な導入実績を持つ。
第1種情報処理技術者
IoTエキスパート

生産管理システム『TPiCS-X』
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