バックアップの設定と用語を徹底解説:初心者からプロまで

連載テーマ「データを守ろう!バックアップの基本から効果的な方法まで」
- Vol.1 データ消失を防ぐための5つのポイントとバックアップの極意
- Vol.2 バックアップの設定と用語を徹底解説:初心者からプロまで
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前回は、バックアップの基本となる5つのポイント(データの消失原因、必要な環境、費用、運用管理、復元方法)と、ケースごとのバックアップ方法について解説しました。
※前回の記事を読む
今回は、バックアップの設定などでよく登場する用語とバックアップの具体的な種類について解説していきます。
1.バックアップの設定・用語について
以降で具体的な解説をする前に、まずは、バックアップを取得する際によく登場する各用語について解説しておきます。
- 圧縮(パスワード・暗号化)
- 世代管理
- ストレージ
- スナップショット
[圧縮(パスワード・暗号化)]
圧縮とは、その名称のとおりデータを小さく抑えるための機能です。
バックアップデータを圧縮させることにより、多くの世代のバックアップが保持できるというメリットがあります。
昨今では、圧縮したバックアップデータにパスワードを設定して、第三者からの悪用を妨いだり、暗号化によってデータが盗み見られることを防止したりする機能もあります。
ただし、圧縮を使用することで、バックアップ全体の処理時間が延びる可能性があるため、注意が必要です。
また、圧縮とは少し異なりますが、データを小さく抑えるための機能として、昨今では重複排除※という機能も注目されています。
※重複排除:細分化されたデータの共通部分をまとめ、効率的なデータ管理を可能とする機能。
[世代管理]
世代管理とは、簡単に言うと「過去何回分までのバックアップデータを残しますか?」というものになります。
1週間分なのか、1か月分なのか、はたまた100個必要なのかは、バックアップ対象となるデータの重要性や想定される復元ポイントなどによって、十分に考慮する必要があります。
また、通常は際限なくバックアップデータを保管することができないため、バックアップデータの保管先の容量に合わせて、設定された期間や個数から外れたバックアップデータを削除するという点も、世代管理の重要な要素となります。
[ストレージ]
ストレージとは、データを保管する機器や記憶領域のことを指します。
例えば、パソコンの中のCドライブなどもストレージに該当しますし、外付けHDDやクラウドサービスで提供されるものもストレージの一種に該当します。
バックアップにおいてストレージは、保存容量について注目されることが多いですが、ストレージを構成するHDDやSSDの読み書きの速度やコンピューターと接続するケーブルの通信速度なども重要な要素です。
[スナップショット]
スナップショットとは、ある時点におけるパソコンやシステムの状態を、まるでその瞬間を写真で切り取ったかのように素早く取得することができるバックアップ機能の一種です。
昨今のバックアップソフトでは、スナップショットでシステム全体の状態を取得し、その情報を利用することで、システムにほとんど影響を与えることなくバックアップが可能です。
(旧来のバックアップでは、システム全体のバックアップを安全に取得するためには、システム自体を停止することが一般的でした。)
2.バックアップの種類について
それでは、データのバックアップの取り方、その種類について具体的に解説していきます。
はじめに、バックアップにはどうような種類があるのかを押さえていきましょう。
バックアップの種類には、一般的に次の4つの種類に分けられると言われています。
①フルバックアップ
②差分バックアップ
③増分バックアップ
④永久増分バックアップ
名前からなんとなく、どういったバックアップの種類なのか想像できるかもしれませんが、1つ1つ具体的に解説していきます。
①:フルバックアップ
フルバックアップとは、「フル(Full)」が表す通り、バックアップ対象をすべて丸ごと」バックアップするというものです。
バックアップを取得した際の状態をそのまま復元することが可能なため、「世代管理」という観点から見ても管理がしやすく、実際の復元時においても少ない手順でデータを復元することができるというメリットがあります。
その反面、デメリットとして他のバックアップの種類と比較した場合に、バックアップ自体の時間が長くなることや、1つ1つのバックアップデータが大きくなるため、バックアップ先のストレージの容量を多く確保しておく必要がある点には注意が必要です。
ただ、昨今の専用ソフトの多くでは、「圧縮」や「重複排除」などの技術を組合せることで、バックアップ時間の短縮が図られているほか、世代管理も標準機能として組み込まれています。
②:差分バックアップ
差分バックアップとは、「差分」が表す通り、ある時点からのデータの差を比較してバックアップをするというものです。
ある時点というのが、先にお話した「フルバックアップ」です。
差分バックアップは、フルバックアップで取得したバックアップデータを起点として、それ以降に新たに作成・変更のあったデータについて、その変更箇所をすべてバックアップします。
変更箇所をバックアップ対象とすることから、フルバックアップと比較して、バックアップ自体の時間、バックアップ先の容量ともに少なく抑えられることがメリットです。
決められた期間の最初にフルバックアップを取得して、期間の終わりまで差分バックアップが実行されるという世代管理のサイクルを繰り返します。(直近のフルバックアップが差を比較する起点となります。)
一見効率のよさそうなバックアップに見えますが、バックアップを取得するたびに重複したデータが繰り返し取得されることや、ストレージの利用効率の低下、バックアップ時間の延長などのデメリットがあることから、以降で説明する「永久増分バックアップ」に置き換えが進んでいます。
③:増分バックアップ
増分バックアップとは、前回取得したバックアップデータから新たに作成・変更があった分(増分)だけを積み重ねるようにバックアップするというものです。
差分バックアップと同様に、初回の起点がフルバックアップとなりますが、以降のバックアップにおいては、前回の増分バックアップが起点となります。
前回の増分バックアップからの変更箇所を対象としたバックアップとなるため、フルバックアップや差分バックアップと比較して、1回あたりのバックアップの時間と容量を抑えられることがメリットです。
ただし、復元時においては、フルバックアップと復元したいポイントまでの間に取得されたすべての増分バックアップが必要となるため、復元に大きく時間と手間が発生する可能性があるほか、バックアップデータの破損や誤った削除等により、一つでもバックアップデータが欠損してしまった場合は、復元することができなくなってしまう点に注意が必要です。
④:永久増分バックアップ
永久増分バックアップとは、増分バックアップの復旧時に発生する可能性のあるデメリットについて、改善を施したバックアップです。
「永久増分」とあるようにバックアップの方法・対象は増分バックアップと同様ですが、あらかじめ設定された内容に従い、フルバックアップデータと増分バックアップデータを合成して新たなフルバックアップデータとするというのが一番のメリットとなります。
それにより、一定周期で取得していたフルバックアップを取得し直すということが不要となり、継続して短い時間での増分バックアップを維持できるほか、復旧時においても、合成済みのフルバックアップデータを使用することで、復旧に必要なバックアップデータ数を少なくすることが可能となっています。
バックアップソフト毎に細かな仕様は異なりますが、昨今では「永久増分バックアップ」を使用したものが主流となっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回はバックアップに関わる用語のご紹介と、実際のデータをバックアップする上でのバックアップの種類についてお伝えしました。
次回はバックアップにおける運用管理について解説するほか、バックアップにおけるトレンドについてご紹介していきます。
お困りごとがありましたら、お気軽にお問合せください。