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プロセス系製造業における生産スケジューラ(生産計画システム)の計画ロジックとは

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プロセス系製造業における生産スケジューラ(生産計画システム)の計画ロジックとは

連載テーマ「プロセス製造業でも生産スケジューラが活躍しています!」

    1. Vol.1 プロセス系製造業における生産スケジューラ(生産計画システム)の計画ロジックとは
    2. Vol.2 プロセス型製造における生産スケジューラ(生産計画システム)導入の難易度について「タンク繰り」

【プロセス製造業における生産スケジューラの活躍について】まとめた資料をダウンロードいただけます。

プロセス製造業では、計画時に考慮すべき内容が多く、ベテランの計画担当者が様々な内容を考慮しながら
Excelや紙を使い、時間をかけて生産計画を立てていることが多いです。
計画業務は属人化しており、変化に追従した計画を立案することに苦労されています。 

生産スケジューラを検討してみるものの、複雑な制約条件をクリアできずに導入を断念している企業様が多くいらっしゃるのではないかと思います。
そこで、今回ご紹介させて頂くのは、医薬品(錠剤)を製造しているお客様へ導入した生産スケジューラAsprovaの適用例となります。

プロセス系製造業のひとつである、医薬品(錠剤)製造では、以下のような制約条件を考慮して効率的な生産計画を立案しなければいけません。

  • 錠剤毎の大きさや異なる包装方法を考慮した包装計画
  • 錠剤の連続生産時における清掃時間

このようなスケジューラへの適用が難しい制約条件が存在する場合にも、弊社ではお客様のご要望を実現するためにプラグイン開発を行い、多数の生産スケジューラAsprovaを導入している実績がございます。

※プラグイン:ソフトウェアの機能を拡張するプログラム
様々なプラグイン開発についてはこちらで解説しております。

医薬品(錠剤)製造への適用例として、以下の内容を順に紹介いたします。

  1. 生産スケジューラによるロット組み
    自動計画を行う前に、バルクのロット組みを行う必要がある
  2. 自動計画方法
    仕掛在庫や段取り時間を考慮した計画を行う必要がある
  3. ロット番号の附番 
    製造したバルクロットや製品に対してロット番号を付与する必要がある

生産計画に役立つ生産スケジューラ(生産計画システム)に関する資料をダウンロードできます

1.生産スケジューラによるロット組み

1.1 背景

用語の説明として、品目種別はバルクと製品の2種類あります。
バルクとは「実際服用する錠剤1粒」を指します。
製品とは、「錠剤をビンやシートなどの入れ物に入った形態」を指します。
今回紹介する事例では、生産は見込み生産です。

1.2 バルクロットの算出

月単位に生産する製品生産数をスケジューラに連携します。(図1:背景色は製品毎)
※図1の製品A-1~A-4は同じバルクを使用して生産します。

製品 生産月 生産数
A-1(20個包装) 2022/5 60
A-1(10個包装) 2022/5 40
A-3(30個包装) 2022/5 68
A-4(40個包装) 2022/5 0
A-1(20個包装) 2022/6 102
A-2(10個包装) 2022/6 24
A-3(30個包装) 2022/6 28
A-4(40個包装) 2022/6 12

図1:月単位製品生産数

製品生産数(図1)からバルク必要数を計算します。
バルク必要数 = 製品生産数 × 包装単位

バルクを製造するには製造ロットサイズを考慮する必要があるため、算出したバルク必要数からバルクロット必要数を計算します。
バルクロット必要数 = バルク必要数 ÷ バルクロットサイズ
※今回バルクロットサイズは1,200としています。計算結果が図2となります。

製品 生産月 生産数 バルクロット必要数
(=製品生産数×包装単位)
バルクロット必要数
(=バルク必要数/1200)
A-1(20個包装) 2022/5 60 1,200 1.0
A-2(10個包装) 2022/5 40 400 0.3
A-3(30個包装) 2022/5 68 2,040 1.7
A-4(40個包装) 2022/5 0 0 0
A-1(20個包装) 2022/6 102 2,040 1.7
A-2(10個包装) 2022/6 24 240 0.2
A-3(30個包装) 2022/6 28 840 0.7
A-4(40個包装) 2022/6 12 480 0

図2:製品生産数から必要バルクロット数の計算結果

今回の例では5月製品生産分でバルクロットは3ロット必要(1+0.3+1.7)、
6月製品生産分でバルクが3ロット必要(1.7+0.2+0.7+0.4)となります。

1.3 バルクロットと製品の組合せ

バルク1ロットからどの製品を生産するかの組合せ(ロット組み)を決定する必要があります。
ロット組みのルールを以下のように定義し、プラグイン開発で実現しました。

ルール1)バルク1ロット=1製品となるような組合せ ※ルール1に当てはまらない場合はルール2へ
ルール2)バルク1ロット=複数製品になる場合、できるだけバルク1ロット内の製品数が少なくなるように組合せ
ルール2-1)ロット組みの基点となる製品を決定する
優先度1)元のバルク必要数が1ロット以上の製品
※1製品のロット数を減らしたいため
優先度2)製品生産数の多い製品
ルール2-2)ルール2-1で選択したロット組み基点の製品と合わせてちょうど1ロットになる製品を一緒に組合せ
※未存在の場合、最も生産数の多い製品を選択し、組合せ

今回は例として、図2の情報を元にロット組みします。
5月分のロット組みを行います。

・ルール1により、バルク1ロット=1製品となる組合せを優先します(製品:A-1,A-3)
→ 製品A-3は0.7ロット分が残ります。
・製品A-2(0.3ロット)とA-3(残0.7ロット)でバルク1ロットになるため、1ロットから製品A-2,A-3を生産するように組合せします

最終的に5月生産のロット組みは以下となります(図3)
下図の組分けの値が同じ場合、同じバルクロットから生産されます

生産月 組分け 製品 製品生産数 バルク必要数
(=製品生産数×包装単位)
バルクロット必要数
(=バルク必要数/1200)
2022/5 X001 A-1 60 1,200 1.0
2022/5 X002 A-3 40 1,200 1.0
2022/5 X003 A-2 40 400 0.3
2022/5 A-3 28 840 0.7

図3:5月生産分のロット組み結果

6月分のロット組みを行います。
・ルール1により、バルク1ロット=1製品となる組合せを優先します(製品:A-1)
→ 製品A-1は0.7ロット分が残ります。
・ルール2により、バルク1ロット=複数製品の組合せを検討します。
・ルール2-1により、ロット組みの基準となる製品を決定します。
・製品A-1の生産量がバルク1ロット以上のため、製品A-1を基準とします。
・ルール2-2により、製品A-1と一緒に生産する0.3ロット分の製品を決定します。
・0.3ロット分だけ生産する製品は無いため、最も生産量の多い製品A-3を一緒に生産します。
→製品A-3は0.4ロット分が残ります。
・製品A-2(0.2ロット)とA-3(0.4ロット)とA-4(0.4ロット)でバルク1ロットになるため、1ロットから製品A-2,A-3,A-4を生産するように組合せします
最終的に6月生産のロット組みは以下となります(図4)

生産月 組分け 製品 製品生産数 バルク必要数 バルクロット必要数
2022/6 Y001 A-1 60 1,200 1.0
2022/6 Y002 A-1 42 840 0.7
2022/6 A-3 12 360 0.3
2022/6 X003 A-2 24 240 0.2
2022/6 A-3 16 480 0.4
2022/6 A-4 12 480 0.4

図4:6月生産分のロット組み結果

ちなみに、組分け”Y002のロット組み基準をA-3とした場合、製品A-1が3ロットへ分割されるため、望ましい結果とはなりません。(図5)

生産月 組分け 製品 製品生産数 バルク必要数 バルクロット必要数
2022/6 Y001 A-1 60 1,200 1.0
2022/6 Y002 A-3 28 840 0.7
2022/6 A-1 18 360 0.3
2022/6 Y003 A-1 24 480 0.4
2022/6 A-2 24 240 0.2
2022/6 A-4 12 480 0.4

図5:6月生産分のロット組み結果(NG例)

最後に本機能前提事項として、以下内容があります。
・月単位のバルク必要ロット数は整数とします。
※員数の関係でバルク必要ロット数が少数の場合でも、整数へ切上げ。
例) バルクロットが150で、製品が140必要な場合
必要なバルクロット数は0.93(=140/150)であるが、実際は1ロットで生産します。

2.自動計画方法

自動計画のロジックは、バルクと製品で異なります。それぞれの計画方法を紹介します。

2.1 バルクの自動計画

バルク計画の全体概要としては、以下の4点となります。

  • バルクロットを製造するための工程は3つ。 「工程1」→「工程2」→「工程3」
  • 生産月の中で同じバルクが連続生産となるように計画する。
  • ネック工程があるため、ネック工程よりも前工程はネック工程を基点にバックワード(後づめ)で計画する。
  • ネック工程よりも後工程はネック工程を基点にフォワード(前づめ)で計画する。

※上記内容はAsprovaの標準機能で実装しております。
※ネック工程を基点に計画することで、全体の製造期間を短くすることができます

例として、以下のバルクロットを計画します。(図6)

生産月 バルク ロット数
2022/5 A 2
2022/5 B 3
2022/5 C 2
2022/6 A 5
2022/6 B 2
2022/6 C 3

図6:計画対象バルク

まず、生産月-バルク単位にフォワードで計画します(図7)
生産月-バルク単位(フォワード計画)

図7:工程1から順番にフォワード割付した結果

工程2がネック工程の場合、工程1と工程2の間が空いて仕掛在庫が増えてしまうため、工程2を基点に品目単位に工程1をバックワードで計画します。(図8)
※工程1は品目単位に連続生産したいため、品目単位に先頭ロットに寄せております。
ネック工程最適化計画

図8:工程1をネック工程である工程2へ引き付けした結果

割付時の主な制約として、連続生産時の清掃時間考慮や製造時間短縮があり、プラグイン開発にて対応しています。
・連続生産時の洗浄時間考慮
2ロット単位に洗浄時間が必要なため、バルク2ロット単位に洗浄時間の段取り計画を入れ込む(図9)
清掃時間を考慮した計画

図9:同一バルク生産時の段取り発生

・連続生産時の製造時間短縮
4ロット目以降は製造時間が短縮されるため、同品目連続生産で4ロット目以降は製造時間を短縮(図10)
連続生産時の製造時間短縮を考慮した計画

図10:同一バルク生産時の製造時間短縮

2.2 製品の自動計画

製品計画の全体概要としては、以下の3点となります。
・バルクから製品を製造するための工程は1つ 「包装工程」のみ
・包装工程は以下要因により、段取りが発生する
・包装する錠剤の大きさが異なる
・包装方法が異なる
・包装するバルクが異なる
・段取りが少なくなる計画とする
※計画しながら、段取りが少なくなるものを選んで計画する必要があるため、プラグインにて対応

計画方法としては、直近計画した作業に対して、以下の優先度で計画します。
優先度1)同じバルクで組分けされている(前章のロット組みで同じ組分けとなった製品)
優先度2)同じバルクの製品
優先度3)同じ錠剤の大きさを使用する製品
優先度4)包装方法が同じ製品
※優先度2~4については、段取り時間が短くなる要素の優先度を上げております
※優先度2~4について、複数製品が該当する場合、ロット組みされていない製品を優先
→上記制約を実現することで、包装工程の段取り回数を少なくなるようにしております。

例として、以下の製品を計画します。(図11)

包装作業 バルク 組分け 錠剤の大きさ 包装方法
1 A X001 10個詰め
2 A X001 20個詰め
3 A X002 20個詰め
4 B X003 20個詰め
5 B X004 10個詰め
6 B X004 20個詰め
7 C X005 20個詰め

図11:製品計画対象

過去に包装作業1が計画されていたとします。(図12)
包装作業1を計画

図12:1ロット目の割付結果

優先度1(同じロット組み製品優先)により、同じ組分けである包装作業2を包装作業1の後に計画します。(図13)包装作業2を計画

図13:2ロット目の割付結果

次に優先度2(同じバルク優先)により、包装作業3を計画します。(図14)包装作業3を計画

図14:3ロット目の割付結果

バルクAの包装作業が存在しないため、次に割付する候補として、バルクBとバルクCがあります。
優先度3(同じ錠剤の大きさ優先)により、バルクCの包装作業7を計画します。(図15)
包装作業7を計画

図15:4ロット目の割付結果

バルクCの包装作業が存在しないため、残りのバルクBの作業を計画します。
優先度4(包装方法が同じ優先)により、包装作業4または包装作業6が候補となります。

しかし、包装作業6が包装作業5と同じロットから生産されるため、包装作業6と5は連続して生産する必要があります。
包装作業6を先に計画すると、「(包装作業6)→(包装方法段取り)→(包装方法5)→(包装方法段取り)
→(包装方法4)」となり、包装作業5-包装作業4の間でも段取りが必要となります。
そのため、段取り回数を少なくなる包装作業4から計画します。

最終的に以下の計画となります。(図16)包装作業計画が完成

図16:最終的な製品の割付結果

3.ロット附番

ロット附番のロジックは、バルクと製品で異なります。

3.1 バルクのロット附番

バルクロット附番方法について、以下概要となります。
・先頭工程が早く計画されている順番に品目単位にロット番号を付与します。
・品目単位にロット番号が異なります。(自社製品/他社製品でロット附番ルールが異なります)
例) 自社製品の場合、製造年上2桁+連番 (2201→2202→…→2298→2299→22A0→22A1…→22A9→22B0)
※アルファベットについて、アルファベットの”I(アイ)”、”O(オー)”は
数字の誤認される可能性があるため、使用しない。
例)他社製品(A社)の場合、”X-”+連番3桁(X-001→X-002→…→X-999→X-001→X-002)
※連番使い切りの場合、0から再附番する

3.2 製品のロット附番

製品ロット附番方法について、以下概要となります。
・生産に使用するバルクのロット番号を引継ぎします。
※生産に使用するバルクは生産順番で使用します。
・同じバルクロットから生産する製品は同じロット番号となります

前章での計画結果をロット附番した際は以下となります。(図17)
計画に対しロットナンバーを附番

図17:製品のロット附番結果

まとめ

今回は、医薬品(錠剤)製造へ導入した生産スケジューラAsprovaの適用例を紹介しました。
生産スケジューラ導入によって、生産計画業務の効率化や属人化の脱却を実現しました。

プロセス系製造業への生産スケジューラ導入は難易度が高いですが、特有の要件に対してはプラグイン開発にて対応することで、問題なく導入することが可能です。
生産スケジューラAsprovaの導入を適用される際には、実績のある経験豊富な導入支援パートナーの支援が推奨されます。

また、生産スケジューラAsprovaの導入を適用される際には、実績のある経験豊富な導入支援パートナーの支援が推奨されます。
※導入支援パートナー選定時のポイントはこちらでご紹介

弊社では、みなさまの生産計画業務における課題解決に向けて、システム構築によるご支援をしております。
生産計画業務効率化に向けたシステム検討の際は、是非ご相談下さい。
 

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