システムの導入は協同作業である

連載テーマ「生産管理システム導入の秘訣」
前回までは、提案依頼をするためにはどんな内容をSIベンダーに伝えなければならないかについて説明してきました。
この提案依頼とは、いわゆる「RFP(=Request For Proposal)」です。この提案依頼書(RFP)の内容次第で、「動くシステムが手に入る」か「動かないシステムを導入してしまう」かが決まってしまいます。
システム導入が成功したと言えるためには、
- 遅延なく本稼働すること
- 予算内で完成すること
- ユーザが期待通りの機能、品質のシステムを受け取ること
- 社内・経営トップから評価されること
- SIベンダーとして、受託したシステムが納入日に納品でき、予定通りに検収が上がること
- SIベンダー、ステークホルダー双方に収益性が高いこと
となります。
では、どうしたらステークホルダーが満足する”動くシステム”を手に入れることができるのでしょうか。
前回までで説明してきた内容を提案依頼書(RFP)として作成し、複数のSIベンダーに提案依頼をします。
その後SIベンダーから「提案書」を受領しますが、「この提案なら動くシステムが導入できそうだ。ここに任せれば大丈夫そうだ。」と思える提案書を受け取れるようにするには、どうしたらよいでしょうか。
提案書づくりは「発注側」と「提案側」の協同作業である
- どちらか一方だけが頑張っても「良い提案書」はできない、もらえない
- どちらか一方が手を抜いたら「良い提案書」はできない、もらえない
「良い提案書」とは
- 提案依頼事項に応えている
- 提出期限を守っている
- システムの目的、主旨に合った提案になっている
- 提案依頼事項の漏れが補われている
- 具体性がある
- 双方のリスクを想定している
- 双方の役割が明確になっている
- 見積り金額が正確に算出されている(前提条件が洗い出されている)
- 提案依頼事項の見落としがない
良い提案書が作られる背景
提案を依頼した側の意図、期待、要件が伝わっていること
そのためには、
- 提案依頼書(RFP)および説明時に、社内用語、企業方言、業界用語を使わない。
- 短縮記号は使わない。
- 口頭ではなく、文書化して要望を明確に伝える。
十分な体制と時間がとられていること
そのためには、
- 依頼内容の難易度を考慮して日程を決める。
- 情報収集に時間を要する依頼内容の場合は、事前に着手できるように情報提供する。
- 自社側の都合で提出期限を決めない。
提案依頼書(RFP)が熟読されていること(熟読してもらえるように仕向ける)
- 提案依頼書(RFP)が受領されてからの質問の質で、読込みの深さを判断する。
- 提案依頼書(RFP)を読込んでいれば当然わかるはずの質問をして反応をみてみる。
良好なコミュニケーションができていること
そのためには、
- 「念のために連絡しておいた方がいいかな。」と思った事は、連絡すべきである。
- 自分たちがあたりまえに使っている用語の多くは、相手は知らない用語であり、しかも聞き流していることが多いので使わない。
- 自分たちが当然・普通と思っていることは、相手にとっては当然・普通なことではないと考えること。
- 「察してください。」は捨てること。
そのアプローチ、間違っていませんか
- SIベンダーを見下していないか
- 無理な見積りを要求していないか
- 無理なスケジュールを要求していないか
- 競合させれば安くなると思っていないか
- あらかじめ「本命」と「当て馬」を決めていないか
まとめ
今回は、「システムの導入は協同作業である」について説明してきました。
いいかげんな提案依頼(RFP)では、「動くかな?システム」となってしまいます。
動くシステムを手に入れるための努力を惜しまないようにしてください。
次回は、「どの提案を採用するか」について考えていきたいと思います。
筆者
プロフィール
青木 勝義 Katsuyoshi Aoki
経歴:
生産管理業務に携わって約25年。こよなく生産管理を愛しており、生産管理システムTPiCS-Xの導入は約30ユーザ程となる。地域柄、自動車部品サプライヤーをはじめとする幅広い業種のお客様への生産管理システムの導入実績を持つ。
最近は社内の若手メンバーへの育成に力を入れており(社内の生産管理勉強会の講師として活躍)、若手メンバーの成長を日々の楽しみとしています。
休日は愛娘とジャニーズのイベントへ繰り出すことを楽しみとしており、恒例行事は、年末のカウントダウンイベントへの参加。名古屋から東京ドームまで車で繰り出している(イベント終了まで、ひたすら車で待機)
TPiCS認定指導員(メーカ認定)の資格を所有。

生産管理システム『TPiCS-X』
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